一期一会の心ばせで、真のもてなしを。

京の社長と数珠紐

2008年06月18日 12:00

■第7回 株式会社たん熊北店 栗栖正博社長 vol.2



――ホームページには「一期一会の心ばせで、真のもてなしを。」と掲げていますが、どういうことなのですか?

はい。「おもてなしの料理」というのは美味しいだけではダメだということです。
お客様が居心地のよいお部屋、愉しい会話が弾むようなきっかけ、全て含めておもてなしです。

例えばおみ足のよくない方がお客様でこられた。
予約席は二階を用意していたのですが、階段をあがるのがたいへんそうなので、
「一階の部屋に変えましょうか?こちらですとテーブルですし足も楽ですよ」と声をかけます。
気のきかないものは二階の部屋に決めているので、そのまま二階に通そうとします。

「うわぁこの階段あがらなあかんの?」とおばあちゃんが言ってても、
頭が固いから二階にご案内する。それはおもてなしではありません。
まごころが入ったおもてなしは、ぱっとみて臨機応変にお部屋をかえてあげる。
そうすると気持ちが通じます。
「二階に席を用意してはったのに、わざわざ手間をかけてかえてくれはった」と
お客様の心を華やかにします。

エアコンが効きすぎて寒いというお客様がいます。
でも他のお客様は丁度いい室温だと感じている。
そういうときは、ちょっとひざ掛けを出してあげます。

料理を食べていても、「これ苦手なんです」ということがあります。
すぐ調理場に報告して料理を変更してもらう。
用意していた料理は無駄になるかもしれませんし、
プライドのある料理人は料理を変えたがりません。
自分が誠心誠意をもって作り上げたメニューがあるのに、それを変更するのは嫌だと。
嫌だけど、お客様が食べられないといっているのであれば
変えたほうがいいやないか、ということです。

「お客様は神様ですから大切にしないといけませんよ」と
初代のおじいさんが口ぐせのようによく言っていました。
メニューが決まっていて、例えできあがっていたとしても、できるだけ、
お客様に合うようにチェンジしていくのが大事です。それが「おもてなしの料理」です。



――マニュアル通りの接客ではおもてなしのサービスはできないのですね。

 “守破離”という言葉があります。まずは教えられたことを守ること。
それは基本なので大切なことです。全部できるようになったらそれを破る。
破って自分なりのサービスや自分なりの料理をつくってみる。

そして今度は離れていく。離れたところから自分のやってきたことを見ると欠点がみえてきます。
それを修行をしていく理念として頭の中に置いておくと、
やがて店長としてやっていけるようになります。そういう社員教育を全社的に行っています。

それが「たん熊北店」の「おもてなしのサービス」ということになるのです。



――家業を継ぐということはいつ頃意識されたのですか?

やらなければならないと思ったのは中学のときですが、
小さなときからそういう環境で育てられました。
父は何も言わないのですが、周りのひとが「三代目」と声をかけてきました。

出入りの魚屋や八百屋のおっちゃんが「お、三代目!ぼん、頑張れよ」と
私の顔を見る度に言うんです。
「何をいうんてんねやろ?」と子ども心に思っていたのですが、周りのひとはもう決めてるんやね。
お客様にも「息子さんかぁ、跡継がんとあかんねやなぁ」とやさしい言葉で声をかけられました。

中学になると身体も大きくなって現場を手伝うようになりました。
私は他所でアルバイトをしてみたいと思っていたのですが、父が許してくれませんでした。

「人間はぼおっとしてたらあかん。勉強するか、働くか寝るしかない。
働くことは人の役にたつことや。お前は料理屋の息子なんやから家の仕事をすることで役に立つ。
勉強も将来の役に立つことや。寝るときと食事のとき意外は何かをせなあかん。
よその商売を手伝うんやったら、自分のとこの商売手伝え」と。

まぁ、何をいうてるんやという感じでしたけど、休みのときはに店に連れていかれ、
海老の皮剥きとか、簡単な仕事をあてがわれてました。

それで、次第に美味しいものを作ることは愉しいこと、
お客さんによろこんでもらえる喜びを感じるようになって、料理人になることを決意しました。


■株式会社たん熊北店HP

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