2008年03月07日
京都の奥の深さや本物の文化を発信したい。
第3回 株式会社吉田治市商店 吉田光宏社長 vol.3
――今期のテーマに「利・命・仁」という論語の言葉を掲げていますね。
論語に「子まれに利を言う、命と与にし、仁と与にす。」とあります。
「子(孔子)はまれに利益について言われた。その時には、常に天の命や、
人の道の本である仁に照らし合わせて話された。」という意味です。
企業は利益をあげなければなりません。
しかし、その利益は会社の使命に基づいたものであり、
人の道に沿ったものでなければなりません。
企業としてはいかに利益をあげていくかを今まで以上に真剣に考えねばなりません。
今、世の中はめまぐるしく変化していますが、その中で変えなければならないものは何か、
変えてはいけないものは何かを見極め、真剣に活動していくことが大切なのです。

――仏具メーカーとして京都の価値を感じることはありますか?
当社は京都で仏具を製作している恩恵を大きく受けています。
京都には技術力のある職人がたくさんいます。
技術の高い職人さんと仕事ができるメリットがあります。
また昔から培われた文化があり、それを自然と見て育っているので、
ものを見る目が備わっています。
この頃は京都のものに似せた京風のものが増えています。
そうではなく本当に京都から発信しているといえるものを作りたいと考えています。
京風というのは江戸時代に既にありました。
かって京都は日本でも最大の工業地帯で手工業が盛んな土地でした。
しかし江戸時代になり、地方で工業が発達し、
京都のものに似せた“似寄(により)の品”が地方でも作られるようになりました。
京ものに対して、国ものという言われ方をしました。
当時はその違いが明確にだったのですが、今はその違いが曖昧になっています。
本当に京都で作られたものが減っています。
本当に京都で作ったものをわかっていただく。
京都の奥の深さや本物の文化を発信することが、
今後も世界に向けて、京都が価値を持ち続ける上で必要なことだと思います。
――最後になりましたが、魅力のある場所は京都にたくさんあると思うのですが、
初めて京都を訪れる方を吉田社長が案内する場合、どこに案内しますか?
私が京都のお寺を案内すると職業柄、専門的になりすぎておもしろくありません(笑)。
なので、やはり食べ物屋さんがいいですね。
和食に限らず京都はおいしいところが多いので、どこか一軒となると迷ってしまいすね。
――それでは、次ぎに紹介していただく伴戸社長はどんな方ですか?
やはり京都の伝統産業の関係で、京都の商人らしい、コテコテの西陣の社長さんです。
――今日は忙しいなか、本当にありがとうございました。
(2008年2月19日取材)
*********************************
株式会社吉田治市商店
京都府京都市下京区松原通麩屋町西入
代表取締役社長 吉田光宏
電話:(075)341-1361
FAX:(075)343-1356
■株式会社吉田治市商店 吉田光宏 【1】 >> 【2】 >> 【3】
――今期のテーマに「利・命・仁」という論語の言葉を掲げていますね。
論語に「子まれに利を言う、命と与にし、仁と与にす。」とあります。
「子(孔子)はまれに利益について言われた。その時には、常に天の命や、
人の道の本である仁に照らし合わせて話された。」という意味です。
企業は利益をあげなければなりません。
しかし、その利益は会社の使命に基づいたものであり、
人の道に沿ったものでなければなりません。
企業としてはいかに利益をあげていくかを今まで以上に真剣に考えねばなりません。
今、世の中はめまぐるしく変化していますが、その中で変えなければならないものは何か、
変えてはいけないものは何かを見極め、真剣に活動していくことが大切なのです。

――仏具メーカーとして京都の価値を感じることはありますか?
当社は京都で仏具を製作している恩恵を大きく受けています。
京都には技術力のある職人がたくさんいます。
技術の高い職人さんと仕事ができるメリットがあります。
また昔から培われた文化があり、それを自然と見て育っているので、
ものを見る目が備わっています。
この頃は京都のものに似せた京風のものが増えています。
そうではなく本当に京都から発信しているといえるものを作りたいと考えています。
京風というのは江戸時代に既にありました。
かって京都は日本でも最大の工業地帯で手工業が盛んな土地でした。
しかし江戸時代になり、地方で工業が発達し、
京都のものに似せた“似寄(により)の品”が地方でも作られるようになりました。
京ものに対して、国ものという言われ方をしました。
当時はその違いが明確にだったのですが、今はその違いが曖昧になっています。
本当に京都で作られたものが減っています。
本当に京都で作ったものをわかっていただく。
京都の奥の深さや本物の文化を発信することが、
今後も世界に向けて、京都が価値を持ち続ける上で必要なことだと思います。
――最後になりましたが、魅力のある場所は京都にたくさんあると思うのですが、
初めて京都を訪れる方を吉田社長が案内する場合、どこに案内しますか?
私が京都のお寺を案内すると職業柄、専門的になりすぎておもしろくありません(笑)。
なので、やはり食べ物屋さんがいいですね。
和食に限らず京都はおいしいところが多いので、どこか一軒となると迷ってしまいすね。
――それでは、次ぎに紹介していただく伴戸社長はどんな方ですか?
やはり京都の伝統産業の関係で、京都の商人らしい、コテコテの西陣の社長さんです。
――今日は忙しいなか、本当にありがとうございました。
(2008年2月19日取材)
*********************************
京都府京都市下京区松原通麩屋町西入
代表取締役社長 吉田光宏
電話:(075)341-1361
FAX:(075)343-1356
■株式会社吉田治市商店 吉田光宏 【1】 >> 【2】 >> 【3】
2008年03月06日
「奮闘努力」「I&I」、そして「時流独創」
――吉田治市商店の3代目社長とうかがったのですが?
当社は祖父が昭和8年に創業した会社です。
実は祖父は京都の出身ではなく、
もとは名古屋の農家の五男でした。
わりと大きな農地を持っていたらしいのですが、
祖父の父の代に相場で失敗して、
祖父は小学校5年のときに
京都の仏具屋に丁稚奉公に出されました。
ところがそのお店も世界恐慌のときに相場で失敗したのです。
そのお店で勤めていてもこれ以上給料はあがらないよと言われ、28歳になっていた祖父は「男としてこのままでは終われない」と思い自分で商売をしようと決意しました。
寺町四条の地で創業したときに
「奮闘努力」という額を掲げて商売を始めました。
「奮闘努力」という創業の精神を忘れてはいけないと、
今でもその額を社内に飾っています。
祖父が起こした会社を長男だった父が受け継ぎ、私は長男だったので、学生時分からこの会社を自分が継ぐということは意識していましたし、それが自然なことだと思っていました。
大学を卒業したときは業界最大手で上場もしている株式会社はせがわに就職しました。
関東の店舗で3年ほど勤めた後、平成元年に京都に戻ってきました。
それから約20年、昨年の7月に3代目として社長に就任しました。
――経営テーマの「I&I Corporation」というのはどういう意味ですか?
一般的に私たちという言葉は英語で(WE)と表されます。
私たち=私(I)とあなた(YOU)という意味です。
しかし(I&I)といったときには私(I)とあなた(I)の違いは存在しません。
私(I)とあなた(I)はあくまで同じなのです。
私はレゲエが好きで、特にボブ・マーリーをよく聴き、ジャマイカにも行きました。
レゲエミュージック、レゲエミュージシャンにはラスタファリズムという思想があって、
彼らが私たちというときに(I&I)と言うのです。
「WE LOVE REGGAE MUSIC」ではなく
「I&I LOVE REGGAE MUSIC」という風に・・・。
私とあなたが同じ立場で区別がないという思想は
仏教の説く「自利利他」の教えにも繋がります。
私とあなたが同じであるということ、
私とあなたは仕事を為す上での責任という点でもまったく同等なのです。
社員同士はもちろん、お得意先、仕入れ先に対しても
この(I&I)という気持ちを忘れてはなりません。
それは単にみんなが仲良くということではなく、ひとりひとりが会社の方針、
目標を十分に理解し、個人におけるその責任を全うしなければならないということです。
その為に自分自身をよく整えることから始めねばならないのです。
――経営ビジョンとして挙げられている「時流独創経営」というのは?
「時流独創」とは哲学者の芳村思風さんの理念で
「ときの流れに流されるのではなく、自らときの流れをつくる気概をもつ。」ということです。
「十年先はこう成るではなく、十年先はこう在らねばならない」、
と主体的な意志によって生きるのでなければなりません。
先にも言ったように住宅事情や信仰心の問題もあって業界は厳しいです。
より安価で今の生活にあった仏具が求められています。
それはときの流れかもしれませんが、仏具の持つ本来の姿を忘れてはいけません。
小さなことからしかできないのかも知れませんが、本来あるべき姿を見失わず、
ときの流れを自分でつくるという気持ちが大切なのです。
■株式会社はせがわ HP
■Bob Marley HP
■株式会社吉田治市商店 吉田光宏 【1】 >> 【2】 >> 【3】
2008年03月05日
「こころをつくる」が経営理念です。
第3回 株式会社吉田治市商店 吉田光宏社長

ダイイチ株式会社の熊谷貴夫社長からレゲエ好きのおもしろいおっちゃんと
紹介を頂いたのは株式会社吉田治市商店の吉田光宏社長です。
株式会社吉田治市商店は京都の伝統産業とも深い関わりのある京仏具メーカーです。
――仏具のメーカーということですが、どういうものを作っているのですか?
仏教の儀式で使う道具全般に製作しているのですが、
当社は特に寺院荘厳具(じいんしょうごんぐ)と呼ばれる
寺院の装飾に使われる道具の製作が強いですね。
でもメーカーといっても、工場があって、そこで仏具を作っているわけではありません。
昔から京都の仏具製造は分業制になっています。
ひとつの仏具が制作される過程で多くの伝統産業などの職人さんの手を経ることになります。
たとえば前机というお寺のご本堂に置く机を作る工程には、
まず木地師といって木で形を造る方がいます。
彫刻を施す部分はまた別のひとが造ります。
形が造られた机に漆を塗るひともいます。
漆を磨き上げて光沢を出すのはまた別のひとです。
金箔を貼るひと、錺金具をつくるひと、蒔絵を施すひと、彩色を施すひと…。
それぞれの工程はすべて違う専門職の方がいます。
――お寺のものはオーダーメイドになるのですか?
当社は寺院などから発注を受けた仏具店から製造の注文をいただき、
設計したものをそれぞれ専門の方に発注し、その施工を管理し、
製品が仕上がるまでのプロデュースをしているのです。
お寺さんは宗派も違えば、大きさも違います。
同じ仏具でも宗派によってその仕様が異なるものもあります。
京都は伝統産業に携わる職人さんが多く、技術水準も非常に高いです。
その分、コストも高くなるのですが、
海外の工場などで大量生産される規格品とは品質がやっぱり違いますね。
技術力の高い専門の職人の方をつかって
価値のある仏具を作っているという自負はもっていますね。
――仏具業界も景気に左右されるものなのですか?
今は業界全体として景気は厳しいですね。
大きな理由がふたつあります。
まず信仰の形態がかわり、宗教心が薄れてきたということです。
住宅事情の変化もあって、仏間どころか畳のある部屋すらない家庭があります。
もうひとつの理由はやはり景気に拠るものです。
お寺というものは基本的に寄付からなりたっています。
世の中のお金がまわっていない時期にはやはり寄付の額は少なくなります。
景気の問題はともかく宗教心に関しては、
業界全体で取り組んでいかなければならないことだと思っています。
当社でも「こころをつくる」ということを経営の理念としています。
二十一世紀の仏匠として、日本の文化を伝承し、日本の伝統工芸を後世に伝え、
日本人のこころを少しずつでも豊かにしていくことが使命だと思っています。
■株式会社吉田治市商店 吉田光宏 【1】 >> 【2】 >> 【3】

ダイイチ株式会社の熊谷貴夫社長からレゲエ好きのおもしろいおっちゃんと
紹介を頂いたのは株式会社吉田治市商店の吉田光宏社長です。
株式会社吉田治市商店は京都の伝統産業とも深い関わりのある京仏具メーカーです。
――仏具のメーカーということですが、どういうものを作っているのですか?
仏教の儀式で使う道具全般に製作しているのですが、
当社は特に寺院荘厳具(じいんしょうごんぐ)と呼ばれる
寺院の装飾に使われる道具の製作が強いですね。
でもメーカーといっても、工場があって、そこで仏具を作っているわけではありません。
昔から京都の仏具製造は分業制になっています。
ひとつの仏具が制作される過程で多くの伝統産業などの職人さんの手を経ることになります。
たとえば前机というお寺のご本堂に置く机を作る工程には、
まず木地師といって木で形を造る方がいます。
彫刻を施す部分はまた別のひとが造ります。
形が造られた机に漆を塗るひともいます。
漆を磨き上げて光沢を出すのはまた別のひとです。
金箔を貼るひと、錺金具をつくるひと、蒔絵を施すひと、彩色を施すひと…。
それぞれの工程はすべて違う専門職の方がいます。
――お寺のものはオーダーメイドになるのですか?
当社は寺院などから発注を受けた仏具店から製造の注文をいただき、
設計したものをそれぞれ専門の方に発注し、その施工を管理し、
製品が仕上がるまでのプロデュースをしているのです。
お寺さんは宗派も違えば、大きさも違います。
同じ仏具でも宗派によってその仕様が異なるものもあります。
京都は伝統産業に携わる職人さんが多く、技術水準も非常に高いです。
その分、コストも高くなるのですが、
海外の工場などで大量生産される規格品とは品質がやっぱり違いますね。
技術力の高い専門の職人の方をつかって
価値のある仏具を作っているという自負はもっていますね。
――仏具業界も景気に左右されるものなのですか?
今は業界全体として景気は厳しいですね。
大きな理由がふたつあります。
まず信仰の形態がかわり、宗教心が薄れてきたということです。
住宅事情の変化もあって、仏間どころか畳のある部屋すらない家庭があります。
もうひとつの理由はやはり景気に拠るものです。
お寺というものは基本的に寄付からなりたっています。
世の中のお金がまわっていない時期にはやはり寄付の額は少なくなります。
景気の問題はともかく宗教心に関しては、
業界全体で取り組んでいかなければならないことだと思っています。
当社でも「こころをつくる」ということを経営の理念としています。
二十一世紀の仏匠として、日本の文化を伝承し、日本の伝統工芸を後世に伝え、
日本人のこころを少しずつでも豊かにしていくことが使命だと思っています。
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